さて、進路相談の季節になると、毎年のように出てくるのがこのお悩み。これはほぼ高校入試に絞られた話かも知れません。(大学入試においてこれを考えるのは、さすがに無意味かと…)
A高校(偏差値高め)に入ってビリの方にいるのと、B高校(入りやすい)に入ってトップの方にいるのと、どっちが有利なんですか?
これ、本当に私も何度も何度も聞かれたことがあります。冒頭の「上位校でビリか、下位高でトップか」という見出しは、一旦分かりやすく表現しています。中間的な位置もあるなど、そう単純な話ではないことは承知の上ですが、書かせていただきます。
このような問いは、即座に答えが出るような類いのものはないのが現状で、ほぼ永遠のテーマと言えることかも知れません。ただ、こういうことは一定の研究もされていて、その点も少し踏まえて書かせていただきます。
有名な心理学の理論に、「ビッグ・フィッシュ・リトル・ポンド効果(BFLPE)」というものがあります。これは、オーストラリアの教育心理学者MarshとParkerが1984年に提唱したものです。
ざっくり言うと、「同じ学力の子でも、周囲のレベルが高い環境(=大きな池)に入ると、自分の相対的な位置が下がることで、自信をなくしたり、自己評価が下がる傾向がある」ということです。
逆に、周囲のレベルが低い環境(=小さな池)にいると、自分はできるという感覚が持ちやすくなり、モチベーションや自己肯定感が高まりやすい。というものです。実際、その学校の上位につけることによって学校成績(評定)がアップして、指定校推薦等の”恩恵に預かる”ケースも生まれます。(自分の希望大学があれば、ですが)
彼らの研究では、難関校に入った生徒ほど、「自分はあまりできないかも…」と感じる傾向が強まり、進学意欲が下がることもあると指摘されています。この心理効果は特に思春期の子どもに強く出やすいとされています。
じゃあ、無理して難関校に入らない方がいいの?…というと、そう単純でもありません。「周囲からの刺激をエネルギーにできるタイプ」は、あえてレベルの高い高校に飛び込むことで、大きく伸びる可能性があります。
また大学入試の現実を見ると、やはり偏差値の高い高校に身を置く方が、進学において有利な点は否定しきれない事実で、「環境の差」はやはり無視できません。
▶結局、どう考えればいい?
結論から言えば、「どっちが正解」というものではありません。周囲と比べて落ち込んでしまいやすいタイプならコツコツ結果を出し、かつ指定校狙い、というのもアリでしょう。多少大変でも、自分を高める環境で成長できるタイプなら、挑戦校も十分に選択肢に入ります。
また難関にチャレンジすることにより得られるもの(学力・成功体験・能力伸長)もやはり大きく、貴重な人生経験になることは間違いありません。
昔から「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」という言葉があります。「大きな組織の末端(牛のしっぽ)より、小さな組織の頭(鶏の口)になれ」という意味です。一方で、「切磋琢磨(せっさたくま)」という四字熟語が示すように、レベルの高い環境に身を置いてこそ力を発揮する子もいます。まず大切なのは、自分の性格を知ることからだと思います。そういう視点も持ちつつ、志望校選びをしていきましょう!