- 2020.12.22職業的な「夢」は15歳で持っておく必要があるのか?
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さて、あまり聞き慣れない言葉です。「ドリームハラスメント」。
この言葉は市民権を得ているとまでは浸透していませんが、「夢を持とう」と仕向ける教育が行きすぎてはいないか?という警鐘として捉えていただければ良いかと思います。
子どもたちは「夢を持て」「夢を持つべき」という前提のもと義務教育も高等教育も進んでいきます。以前のように社会が、そして経済が無条件に成長していくと前提だと、確かにこれで成り立っていたのかもしれません。
バブルもずいぶん前にはじけ、日本の人口減少も始まりました。
いろんな常識が覆されてきて来た昨今、本当にこのままで良いのか?という声が今、至る所で出ています。
書籍『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』(イースト新書・著者:高部大問)も参考にしつつ、少し考えてみたいと思います。
我々は日々、微力ではありますが子どもたちの「夢」には関わらせてもらうことがあります。保護者の方からお聞きしたり、直接本人さんから聞いたり…。あと推薦入試の面接練習でそれを聞いたり、そのフィードバックをする中で、もう少し深掘りして聞いたり。。。
総合的に考えて、例えば高校受験の段階(15歳ぐらい)で自分が将来やりたいことをはっきりと言える子は、3割ぐらいかな…というのが私の印象です。
それに、その時には言えても後に変わっていく子も多いです。その点は当たり前かな、と思います。特に「学校の先生」希望の子は、最後まで貫けるケースが少ない印象です。大学受験の学部決めの段階だったり、大学に入ってから教職課程の履修を断念したり…。
高校受験の段階で学校の先生志望のだった子で、実際に教師として現場で頑張っているという卒業生は、今のところ2人しか知りません。
変わってしまうことがダメということではなく、いろんな情報を見聞きしたり自分の適性や能力を考えたりする中で、方向修正をすることは当たり前のことだと思います。今、世の中の変化が早すぎて、子どもたちもよくわからないのだと思います。
以下は、この手の話になると必ず引き合いに出される話です。
デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が、2011年8月のニューヨークタイムズ紙インタビューで語った言葉
- 「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
これは当時、衝撃をもって受け止められました。
「65%が今存在しない職業に就く」は国や地域によって、ばらつきがあるでしょうが、言わんとする大意は皆さんよくおわかりいただけるのではないでしょうか?
どんどん世の中は変わっていくし、AIではなく「人に」必要とされるものもどんどん変わっていきます。「夢」っていいうのは、ぼんやりでも全然かまわないのではないかな、、、という印象はあります。
こんなデータもあります。
『高校データブック2013』(Benesse教育研究開発センター)によると、「あなたには、将来なりたい職業はありますか」という質問に対して「ない」と回答した生徒の2004年から2009年の推移は以下のようになっています。
●将来なりたい職業が「ない」と回等した生徒(高校生)
2004年 2009年
・進学校 32.5% → 49.0%
・中堅校 30.3% → 43.4%
・進路多様校 29.3% → 48.9%『高校データブック2013』(Benesse教育研究開発センター)より
つまり、どの学力層の高校生であっても、職業的な夢を持てなくなっている傾向があります。これ、少し古いデータなのですが最新の数値をとったらもっと高くなっている可能性はありますね。
もちろん、中高生やもっと早い段階で「自分は○○になりたい!」とはっきり言える子もいますよね。それをモチベーションとして、日々生き生きと過ごせるのではあれば素晴らしいことだと思います。
もちろんですが、それはそれですごいです!
ただ、それが言えないからと言って、負い目を感じる必要はまったくないと思います。これからじっくり、色んなことを経験する中で考えれば良いだけですから。
キャリア教育的なことを重視する高校、例えばこの辺だと伊丹北高には「将来やりたいことがはっきりしている子が行く」という印象がありますが、実際はそうでもないのでは…という印象です。(逆に、それを見つけたいから伊丹北高に行く、というお子さんもいます)「現時点で将来の夢なんて、言えない!」という人、あまり気にする必要はないと思います。
ただ、自分がワクワクすることがどこにあって、どういう分野で人の役に立てそうかを考える機会を持つことは大切だと思います。